「小田の輪の和」はじめての図書紹介コーナーです。
最近寄贈を受けた本のなかから二冊を紹介します。
『青ヶ島の神々』は、元朝日新聞記者、長沼石根さんの紹介で長沼さんの同僚だった酒井武史さんが創った出版社、創土社から刊行された本。
書いた菅田正昭さんは、青ヶ島村役場の職員と助役時代の二度にわたって青ヶ島に住み、島の人たちの生活に根ざした神社の祭をはじめとする民間信仰を記録し続けました。
それだけでなく、柳田国男の関係でも、柳田の「青ヶ島還住記」の分析や、柳田の弟子で伊豆大島出身で中学校の教員をしながら民俗調査と研究に打ち込んだ坂口一雄の聞き書きなどが散りばめられ、永年の蓄積によって活字が紡ぎだされていることがわかります。
「青ヶ島でいらぼん流神道」とは、菅田さんが仮につけた名だと言いますが、他の土地に残る祭や神々と次から次へと繋がってきて、推理小説を読むようなワクワク感が残ります。
柳田もインターネットで全世界とすぐに繋がれる今に生きていれば、このワクワク感をもっと体感できたでしょうに・・・
『みちのくの道の先』は、昨年の遠野郷人会で知り合った目黒安子さんから頂いた本。
郷人会では、新渡戸稲造と柳田の関係などで話が盛り上がり、新渡戸研究者としての
お姿だけしか知りませんでしたが、その後の話で、岩手県久慈市にあったアレン国際短期
大学の学長をされ、大学が閉鎖になってからは、鎌倉にお住まいということもわかりま
した。
鎌倉の柳田学舎のお話をしたり、鎌倉に行った時には、教会でやっている三陸復興支援
の市にもおじゃまさせていただきました。
その目黒さんのご著書です。
タマシン・アレンというアメリカ人女性宣教師の伝記ですが、昭和初年の東北地方大飢饉や昭和八年
の三陸大津波の時の救援活動、アメリカでの日本の紹介などの講演活動などが詳しく書かれて
います。
全く知らなかったことばかりで、目から鱗です。
一時、遠野幼稚園にいたということも初めて知りました。
上記の二冊に共通していることは、著者の永年の人生経験と探究心、そしてひたむきなまでの「対象者」あるいは「対象地」への愛によって創りだされた本ということです。
簡単な思いつきで出来たような本が増えているなか、じっくりと読み応えのある書としてお薦めします。